医師・医療従事者による座談会の撮影の流れ
医師・医療座談会の現場は、スポンサーが製薬会社、企画は医療専門の広告代理店、もしくは医療出版社になり、そしてそれらを記録する医療ライターとカメラマンという構成です。
場所は主にホテル、会議室です。サンプルの写真のように、会議室はプロジェクターを囲むように医師たちが座り、会議室前方にはスクリーンがあって、それを見ながら進行していきます。
会議室の後方に、製薬会社や代理店のスタッフが並んで座っています。
医師、製薬会社、広告代理店のスタッフ、ライターは基本的にスーツにネクタイ着用。カメラマンも同じくスーツです。カジュアルな服装はNGです。
医療座談会の撮影方法
カメラはEOS R5とR6 mrak IIのミラーレスカメラを使用。
従来の一眼レフカメラはシャッター音がするのでクライアントからNGが出ます。無音の電子シャッター撮影します。
レンズのメインは、RF70-200mmのF2.8 ISです。
手持ちでの撮影になるので、手振れ防止機能があるレンズが好ましいです。
F4通しの70-200mmでも問題ありませんが、レンズが暗くなるため、シャッタースピードが稼げません。
明るい単焦点の中望遠、望遠レンズは写りは綺麗ですが、その分、自分の体で動く必要があり、座談会のような撮影では、カメラマンはあまり動かない方がいいため、ズームレンズの方が適しています。
カメラの設定は、絞り開放のF2.8で、シャッタースピードは1/200、ISOは絞りとシャッタースピード、部屋の明るさによって変更します。
照明は、プロフォトのB10、もしくはA1Xを複数台、カーボン製のライトスタンドに装着し、カメラのホットシューにトランスミッターを取り付け、制御するシステムです。この時も発光音は消しています。
以前はコメットやトキスターのモノプロックストロボを使用していましたが、電源が必要なため、コード類を伸ばす必要があり、足をかけて倒す危険性があるので、今は完全にバッテリー式です。 座談会は約1時間、一回の充電で、途中でバッテリーが切れることはありません。
ストロボが使用できない時は、カメラの感度を上げ、後から画像処理でノイズを消します。高感度の強いカメラは、ストロボがなくてもきれいに撮影ができます。
テーブルに、ドリンクやマイクスタンドが映り込むので、座談会の始まる前に、スタッフと話し合って、位置を調節します。
シャッターを切るタイミングは、プロジェクターを見ながら話をしている以外になります。
つまりそれぞれの医師たちが自分の報告が終わって、他の医師たちと座談会形式になった時がチャンスになります。
カメラのレンズは、必ず、医師たちの顔と水平になるようにします。
この場合、カメラマンは床に膝をついて座ると、ちょうど医師たちの顔と同じ高さになります。
注意点としては、
1.プロジェクターを見ながらお話されている時は、極力カメラのシャッターを切らない、ストロボを焚かないこと。
2.カメラのレンズをずっと向けないこと。これは緊張感を与えてしまい、医師たちがこちらを意識してしまうからです。写真を撮る時だけ、一瞬カメラを向けます。
3.写真の枚数は、ばらつきがないように、それぞれの医師を満遍なく撮ります。もしばらつきがある場合、納品する際に調節します。僕はきっちり同じ枚数に合わせています。
座談会終了後、すぐに医師たちの集合写真(記念写真)になります。
撮影する背景、医師の立ち位置の順番など、スタッフと事前に話し合って決めておきます。
スムーズに進行するように、もう一台のカメラに標準ズームレンズを装着しておき、カメラの設定もすべて合わせておきます。
70-200mmのレンズを標準ズームに装着して、絞りや感度などの調節をしていては遅いです。
プロは手際の良さが重要です。
その撮影が終わると撮影終了。素早く撤収。以上になります。
医療撮影のきっかけ
僕はプロカメラマンになったのは23歳の時でした。
はじめての仕事が「いのちジャーナル」という医療の月刊誌で、デビューでいきなり連載企画でした。
「いのち」をテーマに写真で表現するもので、デビューがもっとも難しい仕事だったと、改めて今思います。
その後、紹介で知り合った年上のカメラマンが、医療雑誌で活躍されていた方で、その方の代打で、その雑誌の医療座談会の撮影をするようになり、撮影のノウハウを覚えました。
その繋がりから、医療関係のウェブサイトの撮影を行うようになり、そして、サンデー毎日の医療特集の案件に繋がっていきます。
最初に行った撮影が、その後のカメラマン人生に大きく影響していくのかもしれません。