撮影中に重傷を負ったKさん
先日、撮影で一緒だったベテランカメラマンのKさん。
人物を撮影する際に、声をかけてから、シャッターを押すまでにタイムラグがあり、手が震えて、いつもと様子が違います。
Kさんとは、これまでに何度もお仕事をご一緒していますが、このような状況ははじめてです。
Kさんは、プロ野球(2軍)のオフィシャルカメラマンとして活躍。
オフィシャル(公式)ですが、社員ではなく、契約カメラマンという形です。
Kさんは、撮影中に選手の打ったボールが、右手(利き手)に直撃。
利き手骨折による重傷です。
骨折は完治しましたが、手の感覚が麻痺している状態が続き、神経にもダメージを受けていました。
近い内に再手術を行いますが、完治するのは難しいと言われています。
カメラマンにとって、利き手が痺れていると、シャッターの感覚が掴めず、一瞬を切り取ることができません。
写真を撮りながら、Kさんの声はどんどん小さくなっていき、カメラマンとしての自信もすっかり失われていました。。
撮影中(仕事中)によるケガなので、何らかの補償があると思いましたが、クライアント側はすべて自己責任、自己負担とKさんに告げました。
クライアントは、大手のプロスポーツ団体なので、交渉次第によっては、何らかの解決策があると思いましたが、Kさんは、話し合いは避けたいとのこと。
理由は、話し合いがこじれた場合、仕事を切られる(クビ)になる可能性が心配だからです。 僕は、ここで二つの問題点があると思いました。
1. Kさんは、個人で保険に入っていなかった
一般的に、社員での雇用であれば、労災保険の対象になりますが、フリーランスの場合、保険の対象外となります。
改めて労災保険について調べると、フリーランスでも、その業務の内容によって、任意加入が認められています。
それが、 労災保険の特別加入制度 です。
特別加入の範囲ですが、
・自動車を使用して行う旅客または貨物の個人運送の事業
・土木、建築など工作物の建設、改造、解体等を行う事業
・漁船により水産物、動物、植物を採捕する事業
・林業の事業
・医薬品の配置販売を行う事業
・廃棄物等を収集、運搬、選別、解体する事業
とあり、カメラマンという項目はありません。
厚生労働省に直接、電話で聞いてみました。 |
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回答としては、残念ながらカメラマンは特別加入制度の範囲外で、現状では加入できないとのことでした。
僕個人のお話になりますが、大阪府の府民共済に加入しています。
府民共済のメリットとして、
1.掛け金が一定。 2.職業による加入の制限がない。 |
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府民共済のデメリットとして、
1.掛け金は掛け捨て。 2.年齢や内容によって、民間の保険会社の方が有利。 |
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民間の保険を調べてみると、
チューリッヒ保険会社のスーパー傷害保険があります。
1ヵ月あたり約590円から、国内・海外を問わず、日常生活でのケガを幅広く補償。
補償範囲は本人限定型、夫婦型、家族型から選択。
2つの職業タイプがあり、
A級職(危険の少ない職業)と、B級職(危険の多い職業)があります。
A級職は、芸術家、演出家、美容師、記者、カメラマンなど。
B級職は、農林業作業者、漁業従事者、自動車運転者、建設作業者など。
A級職は、B級職よりも危険度が低く、その分、保険料が安くなります。
残念ながら、労災保険と違い、休業補償はありません。
民間の保険、府民共済(県民共済等)またはその他の保険を現在も検討中。
イベントの撮影や海外での撮影は、カメラマンの分もクライアントが保険に加入している場合もありますが、通常の撮影では、やはりカメラマンが個人で保険に入るしかありません。
2.Kさんの働き方の問題
フリーランスは、複数のクライアント、お客様を持つことで、リスクを分散できます。
特定の限られたクライアントとしか仕事をしていない場合、そのクライアントが倒産など、何らかのトラブルが起きた時、すぐにこちら側も生活の危機に陥ります。
また特定のクライアントに依存してしまうと、今回のように、意見や話し合いができず、関係が対等でなくなり、立場が弱くなってしまいます。
繰り返しますが、フリーカメラマンは、複数のクライアントを持つこと(鉄則)
個人で保険に入ること。自分の身は自分で守るしかありません。
Kさんの回復を心から願うばかりです。
撮影機材の保険
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